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Triangle 17
(最終話/新たな一歩)    
俺達は興宮で一番見晴らしのいい大きな公園を歩いていた。
そろそろ興宮一周のゴールが近づいてきている。
この時間が終わってしまうのが惜しくて、俺は魅音を引き止めた。
「魅音、ちょっと休んでかないか?一日歩き回って疲れた」
「しょうがないな~このぐらいで疲れてるようじゃ圭ちゃんもまだまだだね」
俺達は公園の隅のベンチに座って二人でくつろいだ。
広い公園の隅は人通りが少なく、もうすぐ夕暮れ時ということもあってか人の姿はほとんど見えなかった。
お互いに口数は少なくなっていたが、沈黙が全く苦にならなかった。
「今日は楽しかったなー…」
気の抜けた声で俺は呟いた。
「そうだね~」
魅音も同じように気の抜けた声で返した。
「今度は罰ゲームじゃなく来たいな」
俺はさりげなく魅音の出方をうかがった。
出来れば魅音とこれからもずっとこんな時間を一緒に過ごしたい。魅音も同じように思ってくれているのだろうか。
「…そうだね。こんな格好はもうごめんだけどね」
魅音はそう言って小さく笑った。
「俺はそういう格好がいいなぁ」
「もう、圭ちゃん!」
俺がニヤニヤ笑いながら言うと、魅音はからかわれたと思って怒り出した。

そうやって過ごしていると、結構な時間が経っていた。
「圭ちゃん、そろそろ帰ろう。日が暮れちゃうよ」
魅音はそう言って立ち上がった。
その言葉に俺も同じく立ち上がる。
そして歩き出そうとする魅音を呼び止めた。
「…魅音」
もう一度魅音にきちんと自分の気持ちを伝えておきたい。
例えまた魅音に断られたとしても。
「なに?」
魅音は振り返って俺を見て、俺の真剣な表情に少し驚いたようだった。
こういう時に限って言葉が何も出てこない。
いつもは饒舌過ぎるくらいにスラスラと言葉が出てくるのに。
どう伝えようか少し迷って、すっかり重くなってしまった口を開いた。
「………魅音、俺、魅音が好きだ」
魅音は何を言われたのか分からないというようにぽかんと瞳を見開いて俺を見つめていた。
「……詩音と別れたばかりで魅音と付き合うのは悪いと思う。それに散々魅音を泣かせておいてこんな事言える立場じゃないかもしれないけど……でも、許されるならきちんと魅音と付き合いたい」
いつもの俺からは考えられないくらいたどたどしく言葉を紡ぐ。
心臓の音がいやに大きく響いて煩わしかった。
「……魅音は…どう思ってる?」
心臓が破裂しそうになりながらも、俺はその言葉を吐き出した。
その時、魅音の瞳から涙が一筋伝った。
「み、魅音?!」
その涙に俺は不安がよぎる。
詩音に、もう魅音を泣かせないと言ったのにまた俺は…
「…っ…本当に…?」
「え?」
「…本当に私でいいの?私…詩音みたいに可愛くないし…」
魅音は涙を零しながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
その言葉に俺の不安は杞憂だった事に気付く。
「…何言ってんだ。魅音はこんなに可愛いじゃないか」
そう言ってくしゃっと頭を撫でてやると、魅音の頬がかあぁっと赤く染まり、魅音は俺の胸に顔を埋めた。
「……いままで何度も圭ちゃんの事諦めようと思った。でもそう思えば思う程苦しくて………二人は人前で平気でイチャイチャするし、圭ちゃんが詩音と喧嘩して私の所に来た時は最低だって思ったよ…」
魅音が途切れ途切れに紡ぐ、耳が痛くなるような言葉達を心の中で謹んで受け止める。
「でも…それでも圭ちゃんといると楽しくて嬉しくて…やっぱり好きなの!」
俺は肩を震わせ泣く魅音をぎゅっと抱きしめた。
「…魅音……ごめんな、ありがとう。今まで傷付けた分幸せにするから…」
「…っ…圭ちゃん……!」
魅音も俺の体に腕を回して抱きついてきた。
たくさん傷付けたのにそれでもこんな俺を好きだと言ってくれた事、魅音と心が通じ合えた事が嬉しくて、俺も瞼の裏に涙が滲んだ。

しばらく抱きしめ合った後、顔を上げた魅音の唇にくちづけた。
魅音は反射的に目を閉じて為すがまま受け入れる。
少しして唇を離し魅音と目が合うと、魅音は真っ赤な顔で再び俺の胸に顔を埋めた。


俺達は気が済むまで抱き合った後、どちらからともなく手を繋いで歩き出した。
「ねぇ、圭ちゃん…」
「ん?」
「なんで詩音じゃなくて私なの?」
魅音は視線を足下に落としたまま尋ねてきた。
「うーん…魅音といると安心するからかな」
「え?」
「魅音とは気兼ねなく付き合えて…本気で心の底から笑ったり怒ったり毎日が本当に楽しかった。そこに女の子らしくて可愛い詩音が現れて、もう一人の魅音といるような感覚になったんだ」
魅音が表情を曇らせたのに気付いて、慌てて言葉を続けた。
「もちろんそれは最初だけで、付き合ってるうちに全然性格も違って詩音は詩音だってわかった。だけど見た目とか仕草がそっくりで魅音みたいだって思う時があって…いや、魅音だって思い込みたかったのかもしれない」
魅音は複雑な表情で俺を見つめた。
自分と妹を同一視されていい気はしないだろう。
「でももう間違えてお前達を傷つけるような事はしない。…詩音と約束したんだ。もう魅音を泣かせないって。だから笑ってくれよ」
そう言って表情を曇らせてしまった魅音の頭を撫でた。
魅音は少し目を丸くしてから、俺の大好きな眩しい笑顔で笑った。
「…………うん!」

罰ゲームのゴールはもうすぐそこまで来ていた。でももうこの時間が終わってしまうのを惜しむ事はない。
これから二人で今以上の時間を過ごしていくのだから。

程なくして俺達はスタート地点であるゴールへ戻ってきた。
罰ゲームは終わったけれど、二人の手は離れたりはしなかった。俺達はここから新しい一歩を踏み出した。




End
あとがき