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Triangle 12
(12話/謝罪)

みんなの後ろ姿を見届けてから魅音と向かい合って口を開いた。
「魅音、こんな卑怯な真似して悪かった。でもどうしてもちゃんと話がしたかったんだ」
魅音は椅子に座って手を両膝に置き下を向いて黙ったままだ。
俺は構わず話を進める。
「昨日詩音に謝って話をしてきちんと別れてきた」
魅音の顔にわずかに陰がさした気がした。
「一昨日の晩はいきなりあんな事して悪かった。あの時は本当に混乱しててどうにかしてた。魅音の気持ちも考えずに…あれじゃあ詩音の代わりに魅音を求めたように思われても仕方ないと思う」
魅音の表情を窺ってみても前髪が邪魔をして見えなかった。
「でも魅音が好きなのは本当だから。詩音と付き合うようになって魅音の元気なくなっていくのが悲しくて…
それで魅音が俺にとってどれだけ大切な存在だったか思い知ったんだ。
でも詩音を傷付けるまで自分の気持ちにも気付けなくて、二人とも傷付けて…本当にごめん…最低だよな俺…」
言っているうちに熱がこもり、俺は半ば独り言のように謝った。
そして恐る恐る魅音を見ると魅音の髪の下から一粒の雫がこぼれ落ちた。
「み、魅音?!」
突然の事に驚き魅音の顔を覗き込むと、魅音は瞳からぽろぽろ雫をこぼし泣いていた。
肩とスカートを握り締める手が小刻みに震えている。
「なんで…なんで今更そんな事言うの?」
ここまで一言も言葉を発しなかった魅音が初めて声を発した。その声はいつもの魅音からは想像もつかないくらい弱々しく涙に濡れていて、胸を掻きむしられた。
「詩音とあんな別れ方した後で好きだなんて言われたって…もう遅いよ…」
「魅音…」
肩を震わせ涙を零す魅音が痛々しくて、思わず手を伸ばした。
しかしその手は魅音に払いのけられてしまった。
「触らないで!もうほっといてよ………だから聞きたくなかったのに…」
俺は為す術もなく涙をこぼす魅音を見ている事しかできなかった。
俺…いつも魅音にこんな顔させてばかりだ。詩音と一緒にいたときもいつも泣きそうな顔していた。
もう俺には魅音を傷付ける事しか出来ないのかよ?
「魅音…ごめん…泣かないでくれよ…俺を許さなくてもいいから、俺といたくないならもう近寄らないから…そしたら笑ってくれ。魅音には笑っていて欲しいんだ」
俺に出来る事がもうそれしかないのなら…
情けない事に自分も泣きそうな声になっていた。
自分で泣かせておきながら勝手な事を言っていると思う。
でも、それが俺の一番の願いだから。

結局俺は魅音が泣き止むまで何も出来ず、ただうなだれるだけだった。

その日、俺は家に帰ってから久しぶりに声を上げて泣いた。




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