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Triangle 10
(10話/決別)

翌日、魅音は一人で先に学校に行っていた。
表向きは何事もなかったように振る舞っているけど明らかに俺は避けられていた。
俺とは必要最低限の会話しかしようとしない。
魅音に避けられるのがこんなに苦しくて心が痛むとは思いもしなかった。

俺は魅音が一人になった隙を見て魅音に話しかけた。
謝って、せめて今まで通りに接してもらいたい。
しかし魅音は俺を見ると逃げるように立ち去ろうとした。
「魅音…待ってくれ、俺ちゃんと謝りたい」
俺は魅音の細い腕を掴んで引き止めた。
「…誰に謝るって?私詩音じゃないよ?」
魅音は振り向かずに言った。
「妹傷付けておいてそのまま逃げ出すような男と話す事なんかないね」
魅音は俺の手を振り払ってその場から立ち去っていった。


その日、授業などまるで身が入らず、何をしていても上の空だった。
放課後、魅音はバイトがあるとさっさと帰って行った。
「…圭一くん、今日は詩ぃちゃん来ないんだね。どうする?帰る?」
レナが心配そうに俺の様子をうかがってきた。
「…悪い、今日行かなきゃ行けないところがあるから一緒には帰れない。また明日な」
俺はそう言うと急いで教室を後にした。
とにかく詩音に謝ろう。謝った上で、全てを話してきちんと終わりにしよう。
昨日の様子だと会ってもくれないかも知れない。
それでも謝らなきゃいけないんだ。


詩音のマンションに行くまでの間、今までの詩音との思い出が走馬灯のように頭を駆け巡った。
温かくて、心地良い詩音との思い出。
俺はその心地よさに溺れ、自分の気持ちに嘘をついてズルズル関係を続けてしまい、一番最悪な形でその関係を壊してしまった。
そんな自分を殴ってやりたかった。
だけど、詩音と付き合った事は後悔していない。
たとえ体から始まった関係でも、魅音の面影を重ねていたとしても。
詩音と過ごした時間はかけがえのない大切なもの。
俺は確かに詩音が好きだった…


俺は詩音のアパートへ着くと呼び鈴を鳴らした。しかし案の定何の反応もなかった。俺はもう一度呼び鈴を鳴らす。
詩音が出てこないのは想定の範囲内。
もし詩音がいたとしても素直に出てくれるはずがない。
もし本当にいないのなら、帰ってくるのを待つだけだ。

詩音がいる可能性を考え、時々大きな声で呼びかける。
「詩音?いるか?いるんだったら開けてくれ。きちんと謝りたいんだ。開けてくれるまでずっとここにいるからな!」
俺はしばらくそれを繰り返した。

どれだけの時間が経ったのだろうか。
来たときには太陽が輝いていたのに、もうすっかり日は沈んで夜に包まれ、もうすぐ深夜にさしかかろうとしている。
俺が呼び鈴を鳴らすのをやめ、待ちの体制に入ると時折詩音が玄関の様子を伺いに来る気配や小さな物音が聞こえた。
この中に詩音はいる。ここで引き下がる訳にはいかないのだ。
俺は詩音が出てくれるまでひたすら待ち続けた。


私は玄関のドアの覗き穴から外の様子を伺った。
…まだいる…
全く、あの男いつまでいるつもりよ!
普通出なかったら諦めて帰るでしょ?
最初は無視を決め込むつもりだった。
だけどそのうちいつまでたっても帰ろうとしない圭ちゃんが気になって気になって仕方がなくなくなり、何度も外の様子を伺った。
そしてとうとう私のイライラも限界に達してとうとうドアを開けた。
「一体いつまでいるつもりですか!こんな所にずっといられたら迷惑です」
私は不機嫌な表情を隠そうともせず圭ちゃんを睨んだ。
「詩音!」
座り込んでいた圭ちゃんは慌てて立ち上がって、その場で深々と頭を下げた。
「詩音、本当にすまなかった!」
「そんな所にいられたら邪魔なんで入ってください」
私はそう言うと圭ちゃんに背を向けて部屋へ向かった。
私達はテーブルに向かい合って座った。
「二度と来ないでって言ったはずですけど?それも昼間から押しかけてこんな時間までずっといるなんて迷惑です」
「すまない…だけどどうしても謝りたかったんだ」
圭ちゃんは頭を下げてテーブルに手と額をくっつけた。
「詩音、本当にすまなかった。
詩音には酷い事をしたと思ってる。許してもらえると思ってないけど俺の話を聞いてくれないか?」
言い終わると同時に顔を上げて私の表情を伺う。
今更何を言うつもり?
概ね予想はついている。私にとっていい話ではないだろう。

…でも、それでも何かを期待してしまう自分がいた。

「俺、詩音に言われた通りお前に魅音を重ねていたんだと思う。魅音の女の子らしい部分を詩音に求めてたんだ。
こんな事になるまで自分の気持ちにも気付けなくて…詩音には本当に最低な事をした…」
「…そんな事言われなくたって一緒にいた私の方が良く分かってる。だからもういい!もう気が済んだ?私だって同じようなものだから謝る必要なんてないんです。早く帰って!」
圭ちゃんは見事に私の予想通りの話をしてきた。
もうこれ以上聞きたくなくて、話を遮り終わらせようとした。
「待てって!まだ話は終わってない」
「もういいったら!」
「詩音…今更こんな事言っても信じてもらえないかも知れないけど俺詩音の事も好きだったんだぜ?」
「…え…?」
不意に頬に一筋涙が伝った。
「魅音と重ねて見てたのは確かだけど…でも魅音にはない、素直に甘えてくるところとか、面倒見が良くてしっかりしてるところとか
…詩音のそういうところが好きだった」
圭ちゃんの瞳はまっすぐ私を見て、私の大好きなとても優しい笑顔で微笑んでいた。
だけど、その笑顔に少し悲しそうな表情も混じっていて。
今更そんな事を言うなんて、なんて酷い人だろう。
「それに…詩音と付き合った事で魅音を意識する結果になっちゃったけど最初から魅音が好きだった訳じゃないんだ」
え…?なにそれ…
私が二人を引き裂こうと思ってやった行為が逆に気持ちを近付けてしまったっていうの?
「…ふっ…あはははははは!」
何だか急にバカバカしくなって、おかしくて笑いが込み上げてきた。
「し、詩音?」
「本当私バカみたい!なにやってんだか…」
圭ちゃんが怪訝そうな顔で私を見つめていた。
その表情がまたツボに入り、私はしばらく笑いがとまらなかった。

私はひとしきり笑った後、圭ちゃんの顔を見つめた。
「圭ちゃん…最後にもう一度だけキスしてくれませんか?」
我ながら未練がましさに内心苦笑する。
でもこれで終わりだから。くだらない復讐劇はもう終わり。
その言葉を聞いた圭ちゃんは、私の肩をグイッと引き寄せ、唇を重ねた。
互いに唇を貪り、最後の熱い熱いくちづけを交わした。



私は玄関で圭ちゃんを見送る。
「じゃあな、詩音。…あのさ、こんな事言える立場じゃないかも知れないけど、また雛見沢に遊びに来いよ。今すぐじゃなくてもさ」
「そうですね、またそのうち」
私は曖昧に返事をして微笑んだ。
圭ちゃんが玄関を出たところで私は声をかけた。
「圭ちゃん…これ以上お姉を泣かせたら承知しませんからね?」
振り向いた圭ちゃんは、力強く微笑んで頷いた。
「ああ、もう絶対に泣かせるような事はしない」
「…なぁんて、私に言えた事じゃないか」
私は頭をかきながら苦笑した。
「…詩音、今までありがとう」
「こちらこそ。いい退屈しのぎになりました」
私は最大級の皮肉を込めて笑った。
そして圭ちゃんはマンションを後にした。



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