[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
夏の幻
ひぐらしの声を聞くと思い出す。
雛見沢の穏やかな景色と仲間達との楽しかった日々。
…魅音の眩い笑顔。
昭和58年7月、綿流しの数日後、雛見沢は毒ガスに包まれ村人は全て死んでしまった。
俺はたまたま家の用事で東京へ戻っていて災害から免れた。
その事を知ったのはつけっぱなしにしていたテレビから流れてきたニュースでだった。
事件で雛見沢は閉鎖されてしまい俺達家族は帰るに帰れず再び東京で暮らす事となった。
あれから数年経った今、雛見沢の封鎖が解除され俺は再びこの地を訪れた。
どうして俺だけ置いていったんだよ?
ひと月にも満たない雛見沢での楽しかった日々はまるで夢のように儚く消えてしまった。
でも、当時の夢のような日々は今でも鮮明に覚えている。
その中でも取り分け脳裏に焼き付いているのは魅音の人懐っこい笑顔。
俺は仲間を失ったあの日からずっと彼女達や雛見沢の事ばかり考えていた。
そのうち、無意識に魅音の事ばかり考えている自分に気付いた。
どうしてこんなに魅音の事ばかり考えているのか当時の自分には分からなかった。
魅音はテンションが高くてノリが良く、性別を気にせず付き合える仲間。
その認識が自分の気持ちを分からなくしていた。
魅音の無邪気な笑顔、不敵にニヤリと笑う顔、ごく稀に見せる真面目な顔、稀に一位を逃した時の悔しそうに嘆く顔、
からかわれた時の真っ赤になった顔、頭を撫でた時のうっすら赤く染まった頬…
頭をよぎる魅音の様々な表情をなぞりながら考えて考えて、
俺が魅音の事を好きだと気付いたのは魅音を失ってから約半年後の事だった。
やっと自分の気持ちに気付いたのにもう魅音はいないなんて…
こんな事になるなら変なプライドなんか捨てて魅音にもっと優しくしてやればよかった。もっと沢山触れておけば良かった。
…魅音を女の子だと認めていれば良かった。
せめて夢でも幻でもいい…もう一度魅音に会いたい…
「…圭ちゃん」
俺はその声に反射的に振り返った。
その声は魅音の笑顔と共にずっと脳裏に鳴り響いていた声だった。
「…魅音?!」
俺は本当に幻を見ているのだろうか。
ポニーテールを風になびかせて、後ろから歩いてきたそいつは俺が求めて止まなかった魅音そのものだった。
彼女は悲しげに微笑んで口を開いた。
「詩音です。…お姉が死んでからは私が魅音になっちゃいましたけど」
「…詩音?生きてたのか…」
「はい、私はあの時興宮にいたので」
その姿を良く見てみると、落ち着いた女性らしい服装で、長めのスカートを履いていた。魅音が私服でスカートを履く事はなかった。
それでもその姿は魅音そのもので、詩音には悪いが魅音にしか見えなかった。
「来てくれると思ってました。無事で良かった…」
そして俺達はすっかり荒れ果ててしまった雛見沢を歩きながら色々な話をした。
当時の様子やその後の心境、近況報告まであらゆる事を話し合った。
詩音は今魅音となって頭首を務め、茜さんと共に園崎家を治めているらしい。
雛見沢はなくなってしまったけれど、園崎家は興宮を中心に全国に親族がいる。
その中心で詩音は頭首として頑張っているそうだ。
「…なぁ、魅音になったってどういう事だよ」
「そのままです。頭首である園崎魅音が死んだなんて知られたら大変な事になるから私が魅音になった」
「でも詩音は詩音だろ?それでいいのかよ」
「園崎家にとってはどっちでもいいんですよ。昔から私達はそんなものでした。
今だから言いますけど、元々は私が魅音だったんです。だから私は元に戻っただけ」
そして魅音と詩音が実は入れ替わってしまっていた事とその経緯を説明された。
ある日突然園崎家を背負う事になった魅音はどんな気持ちだったのだろう。
今になって魅音と詩音が背負っていたものの重さを知った。
俺は詩音に魅音への気持ちを話した。
詩音からすれば自分に話されても困るとは思うのだが、ずっと一人で抱えていた気持ちを話し出したら止まらなくなってしまった。
途中から魅音と混同していた事にも気付いていただろう。
それでも詩音は静かに微笑みながら聞いてくれた。
雛見沢を一周して戻って来た時詩音が口を開いた。
「…圭ちゃん、今日良かったらうちに泊まって行きませんか?」
「いいのか?」
「せっかくここまで来たんです。一晩くらいゆっくりしていって下さい」
俺はお言葉に甘えて詩音の家に泊まらせてもらう事にした。
夕飯もごちそうになり、詩音と他愛もない話を沢山した。
そしてそろそろ寝ようかという流れになった時に…詩音に誘われた。
「圭ちゃん、一緒に寝ません?」
「…お前、自分が何言ってるのか分かってるか?」
「分かってますよ。圭ちゃん…私を抱いて下さい」
魅音と同じ顔で同じ髪型でそんな事を言われたら俺には抗う術がなかった。
俺は詩音を抱きしめて僅かに残った理性で詩音に聞いた。
「…本当にいいのか?俺が好きなのは魅音だぜ?」
「私も同じようなものですから。…みんないなくなっちゃって私も寂しいんですよ」
その返事を聞いて俺はためらいなく詩音と布団に入り、詩音を抱いた。
「…んっ…ふ…」
キスをしながら詩音の服を脱がしていく。
初めてだからやり方なんて分からなかったけど、無我夢中で服や下着を剥ぎ取り、そのなめらかな体に触れた。
長い長いキスの後に顔を上げると、さっきまでと空気が変わった気がした。
詩音は小さくしゃくりあげながら泣いていた。
「…詩音?」
「…圭ちゃん…私…魅音だよ…」
魅音だと言ったそいつは俺に向かって手を伸ばしてきた。
「…魅音?」
「生きてたんだね…良かった…」
その手が俺の頬を包んだ。
詩音もさっき同じような事を言っていた。
「…本当に…魅音なのか?」
「圭ちゃん…会いたかった…」
魅音はそう言って涙をこぼしながら俺を抱きしめた。
「…っ…魅音…魅音っ!」
胸が熱くてたまらなくなり、俺も魅音を強く抱きしめ返した。行き場がなく俺の中でくすぶっていた気持ちが涙となって溢れ出した。
「…俺も会いたかった…今までずっとお前の事を考えてたよ…」
「…圭ちゃぁん…」
俺は夢を見ているのだろうか?それとも詩音が魅音のふりをしてくれているのだろうか。
夢でも何でもいい。また魅音に会えたんだ。魅音にこの気持ちを伝えなきゃ。
「…魅音…俺、魅音の事が好きだ…お前がいなくなってやっと気付いたんだ」
「…圭ちゃん……私も…私も圭ちゃんがすき…大好き…!」
魅音が泣きながら俺に抱きついている腕に力を込めた。
俺達はお互い泣きながら抱きしめ合った後、顔を見合わせてくちづけた。
息をするのも忘れる程激しく唇を貪った。
「…んっ…はぁ…」
そのうち唇だけでは足りなくなって、魅音の口内に舌を差し入れた。
「…んんっ?!」
魅音は最初は戸惑っていたが、俺が魅音の舌をつついて誘ってやると魅音もおずおずと舌を差し出して応じた。
「…んぅっ…ふぁ、ん…」
酸素不足で意識がぼんやりしてくるまで夢中で魅音の舌を絡めとり、吸い上げる。そして唇を離しまた貪るを繰り返した。
「…はぁっ、はぁ…」
俺が唇を離すと魅音は目に涙を溜めて、酸素を求め胸を上下させている。
俺は忙しなく動く大きな胸に誘われるようにその膨らみに手を這わせた。
「…やっ…け、圭ちゃん…恥ずかしいよぉ…」
魅音は顔を真っ赤にして顔を掌で覆った。
「魅音、大丈夫だよ。顔見せて」
魅音はふるふると首を横に振った。
俺は魅音の手を取って再び魅音にくちづけて胸をそっともみしだいた。
「…んっ…ぁ…」
俺の手の動きに合わせて時折小さな声を漏らす。その反応が嬉しくて徐々に手の動きが大胆になってゆく。
生まれて初めてのなめらかでやわらかい感触に酔いしれ掌に収まりきらない豊かな胸を弄ぶ。
その胸の頂上にある、紅く色付いて存在を主張し始めた果実を口に含んで舌で転がし、もう片方を指で軽くこねた。
すると魅音の体がびくんと震えた。
「ひゃっ…あっ…だめぇ!」
魅音には刺激が強すぎたのか体をくねらせ、我慢しきれず甘い声をあげる。
刺激から逃れようとする魅音を逃げられないように押さえる。
それから、魅音の身体を余す事なく手と舌で愛撫して全身にキスを降らせた。
「…あっ、あ…けいちゃ…あぁんっ…!」
魅音と素肌をぴったりとくっつけて抱きしめ合い、魅音の奥まで届くように腰を打ちつける。
「みおん…魅音っ…!」
繋がった部分が焼けそうに熱い。
魅音とこのまま溶け合って消えてしまえたらいいのに。
「…ふぁっ…けいちゃん…すきっ、好き…あぁっ…!」
「俺も、好きだっ……魅音!」
どちらからともなく顔を近付け、口をぴったり塞いで深く深くくちづける。
少しでも深く魅音と交わりたくて舌を絡め、肌を重ね、魅音の奥まで自身をねじ込む。
魅音の中も俺をぎゅうぎゅう締め付けて、俺を奥まで誘い込もうとする。
魅音もまた俺を求めてくれていると思うとたまらなく嬉しくて、抜き差しする腰に力が籠もる。
「…あぁっ!けいちゃ…もうイッちゃ…ぁんっ」
「…くっ…俺ももうイきそうだ。一緒にイこうな」
俺はラストスパートとばかりに抜き差しする速度を早める。
「ひぁっ…!やぁ、も…ダメっ…ああぁあっ!」
「魅音、魅音っ…くっ…!」
魅音の締め付けが一層強くなり、ぎゅっと握り潰されるように俺も魅音の中で果てた。
俺達はしばらくそのまま抱きしめ合った。
「魅音…大丈夫か?痛かっただろ?ごめんな…」
魅音も初めてだったようでさっき挿入した時に愛液に血が混じっていた。
「…ううん、気持ちよかった…私圭ちゃんとひとつになれて幸せだよ…」
「魅音…」
「…圭ちゃん、私がいなくなっても私の事忘れないで…」
魅音は切羽詰まった声で再び泣き出してしまった。
「忘れるわけないだろ。みんなで過ごした日々も今日の事も、魅音の事絶対忘れない…だからもう泣くなよ」
「圭ちゃん、圭ちゃん…!」
魅音は俺の胸に顔を埋めて泣いた。
俺は魅音の髪をひたすら撫で続けた。
しばらくして魅音が顔を上げて微笑んだ。
「…圭ちゃん、ありがとう…私もう行くね」
「魅音…俺の方こそありがとう。もう会えないと思ってたのにこうして気持ちを伝えられて、その上魅音と愛し合えるなんて…
幸せすぎて怖いくらいだ」
「…詩音にごめんねって言っといて」
魅音は幸せそうに微笑んでそう言うと、目から光がすっと消え、そして再び光を取り戻した。
「………あれ?私…?」
そして彼女は驚いて辺りを見回した。
「…詩音か?」
「?もう終わったんですか?」
「覚えてないのか?」
「…もしかして…お姉来てました?」
「あぁ…魅音だって言ってたぞ。じゃああれはやっぱり本当に…?」
今まで魅音だと思い込んでいたが、冷静になってくるとさっきの不可解な出来事が信じられなかった。
「魅音が来たって…今までにもこういう事があったのか?」
「あ、いえ。なんとなくなんですけど…時々お姉がいるような気がする事があるんです」
「それで魅音が詩音に乗り移ったって事か?」
「…ちぇー、お姉だけずるい!私だって悟史くんに会いたいよ…」
詩音が拗ねて呟いた。
その表情が子供のようで、俺は詩音の頭を撫でた。
「いつか会えるよ」
「いい加減な事言わないで下さい」
「まだ見つかってないんだろ?ひょっこり帰ってくるかも知れないじゃないか。
…俺だって魅音に会えたんだ。きっと悟史にだって会えないなんて事はないさ」
「…なんの根拠もないのに圭ちゃんが言うと本当に会える気がするのはなんででしょうね」
「死人に会った俺が言うんだから間違いない」
「お姉に会えたのは私のおかげですよー?感謝して下さい」
頭を撫でるとうっすら頬を赤く染め、気持ち良さそうに目を細める詩音がなんだか可愛く見えて頭を撫で続けた。
しかし、その虚ろな瞳に映っているのは俺の姿ではない。
「…詩音、ごめんな。お前の身体犯して」
「それは私が言い出した事だからいいですけど…なんか腑に落ちないな~」
「今日の事は忘れて、今度からこういうのは本当に大切な奴の為にとっとけよ」
「誘いに乗っておいてよく言いますね」
「悪かったって…魅音もごめんって言ってたぞ」
再び頭を撫でると詩音は気持ち良さそうに目を閉じた。
その時ふと視界に入った詩音の腿を見て違和感を感じた。
「…あれ?さっき血出てたのに…」
さっき見たとき精液に混じって血も伝っていたはずなのに、血液だけが綺麗になくなっていた。
「…初めてだから切れてもおかしくないですね。でも圭ちゃん本当にしたんですか?そういう感覚が全く残ってないんですけど…」
詩音も怪訝そうに俺にきいてきた。
「まさか俺が幻覚を見てたとでも言うのかよ?!」
「そうかも知れませんよ?さっきまでの圭ちゃん結構参ってた感じでしたからね」
「そんな馬鹿な!」
今も魅音の身体の感触や熱はこんなにはっきり残っているのに。
頭を抱える俺を見て詩音はクスクス笑い出した。
そして俺達はシャワーを浴び、着替えてから詩音のリクエストで一緒に寄り添って眠った。
翌日、俺は詩音に見送られながら興宮駅へやってきた。
「なんだか憑き物が落ちたような顔してますね」
「まぁな。魅音に会って想い伝えられたからな。今死んでも悔いはないよ」
「そんな事言ってるとお姉が心配して憑いてっちゃうかも知れませんよ」
「ははは、そりゃ嬉しいな」
俺達はふざけて笑い合った。
「圭ちゃん、また来て下さいね」
「ああ…今度来る時は俺も悟史に会えるといいな」
「…そうですね」
詩音は複雑な表情で微笑んだ。
「じゃあまたな」
「お元気で」
俺は晴れ晴れとした気持ちで詩音に見送られながら電車に乗った。