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Frolic
体育の授業中、いつものごとく部活メンバーは罰ゲームを賭け走り回っていた。
「へっへーん、甘い甘い!この私を捕まえようなんて圭ちゃんには100年早いよ!」
その時、他のクラスメイトが投げたボールが魅音に向かって飛んできた。
魅音は後ろから追いかけている俺を見ているのでボールに気付いていない。
「あっ、おい魅音後ろ!」
「そんな手には引っかからないよ!…たっ!」
魅音は俺の警告に耳を貸さず、結果ボールは魅音の頭に命中した。
打ち所が悪かったのか、魅音はそのまま気を失い体が地面に傾く。
「魅音!」
魅音との距離がそんなに離れていなかったので、俺は急いで魅音に駆け寄りすんでのところで魅音を受け止めた。
「魅ぃちゃん?大丈夫?!」
「魅音さん!どうなさったんですの?!」
それに気付いた部活メンバーがこっちに近寄ってきた。
「おい魅音!しっかりしろ!」
揺さぶってみても、魅音の反応はなかった。
「すっかり気を失ってやがる…まったく人の言うことを聞かないからだ!」
「た…大変!圭一くん、魅ぃちゃんを保健室に運んであげて!私先生に知らせてくるね!」
レナはそう言って校舎へ走り出した。
「早く入江に連絡なのです!」
「わ、私も行きますわー!」
梨花ちゃんと沙都子もレナに続いて走り出した。
「委員長どうしたの~?!大丈夫?」
「わーんごめんなさい!こんなつもりじゃなかったのに!委員長起きてよー!」
他のクラスメイトも次第に異変に気付き集まってきて、あっと言う間に取り囲まれた。
その中にボールを投げた本人もまじっていたようだ。
「とりあえず保健室に運ぶからお前らどけ!」
俺は魅音を抱え上げるとクラスメイトをかき分け保健室へ向かった。
「わぁ、お姫様抱っこ!」
その中、とある女子生徒が面白半分にそう言った。
この非常時に…マセガキがっ!
「…大体魅音のどこがお姫様だっつーの」
ここで声を荒げると大人気ないので聞こえないように小さく呟いた。
「せんせーい…ってここ保険の先生いないんだっけ」
保健室に入ると、以前の癖で存在しない先生を呼んでしまった。
先生が足りないのは分かるが、いざという時の為に保険の先生くらい用意しておくべきだと思う。
俺はベッドまで移動すると魅音を横たわらせた。
そこで体を傾けたままふと魅音の表情に見入ってしまった。
目を瞑って眠っているような表情の魅音は、いつもの嫌味な顔と違ってどこかあどけなさが残っていた。
「……魅音も黙ってりゃそれなりに可愛いのにな……」
思った事がそのまま口から零れた。
その時、突然魅音の瞼が震え、深い緑がかった瞳が姿を現した。
「……ひゃっ?!」
至近距離で目が合い、魅音の大きな目が見開かれる。
次の瞬間、慌てて起き上がった魅音と俺の頭がゴッという大きな音を立て激突した。
そして二人して頭を抱えた。
「あいたたた……」
「…ってーな魅音!急に起き上がんじゃねーよ!」
「なっ…なによ!元はと言えば圭ちゃんが私の顔を覗き込んでたのが悪いんでしょ?!一体顔なんか覗き込んで何してたのよ!」
「何もしてねえよ!お前人に運んでもらっておいてその態度かよ!」
「そんなの頼んでない!人が気失ってる時に勝手に顔覗き込むなんて最低!圭ちゃんの変態!」
「はぁ?!何で俺が変態呼ばわりされなきゃいけねぇんだよ!大体なぁ、お前みたいなオトコオンナに誰が手出すか!」
「なっ…なんですってぇ?!圭ちゃんのバカ!圭ちゃんなんかキライキライ!」
魅音は怒って俺をポカポカ殴り出した。
「いててて…!やめろって!まったくお前は口を開けばそんな事しか言えないんだな!」
俺は魅音の両手を握って攻撃を食い止めた。
「いや!離してよ!」
「お前が殴るからだろうが!」
その時、廊下からパタパタと足音が聞こえて、保健室の扉が開いた。
「圭一くん、魅ぃちゃんは……あっ?!」
「きゃっ?!け…圭一さん不潔ですわーーー!!」
「圭一…いくらなんでも学校ではマズいのです」
保健室に駆け込んできたレナと沙都子と梨花ちゃんが俺達を見た途端、顔を赤くして口々に叫んだ。
「お前ら何言って…」
なんの事だか分からず俺は魅音と顔を見合わせる。
……あ……
そしてようやく気付く。
魅音の両手首を掴み、ベッドの上で争う俺達の姿が…魅音を押し倒そうとしてるように見えたらしい。
魅音もそれに気づき、頭から煙を吹いて真っ赤になった。
「いっ…いやぁーーーーっ!!」
魅音は大声で叫ぶなり俺を思いっきり突き飛ばした。
「うわっ?!いててて…」
「圭一くん…これはどういう事かな?かな?」
顔を上げるとレナがどこからか鉈を持ち出して見る者を凍らせるような恐ろしい笑みで俺を見下ろしていた。
「……ごっ、誤解だ!俺は何もしてない!」
「この期に及んでまだそんな事を言いますの?!ごまかしたってわたくし達見てましたのよ!見損ないましたわ圭一さん!」
横で梨花ちゃんが満面の笑顔で俺の頭をなでなでしていた。
「圭一、死んだら骨は埋めてあげますですよ」
「違う!信じてくれ!魅音も黙ってないで何とか言え!」
「け…圭ちゃんの変態~~!!」
魅音は真っ赤な顔で半泣きになりながら叫んだ。
魅音までそんな事を言うのかぁ!!
「圭一くん、覚悟っ!」
「なっ?!やっ…やめろ…!ぎゃあああぁぁぁ~~!!」
かくして俺の悲鳴が学校中に響き渡った。
後に先生が来て半殺しの目に合うも、なんとか先生に状況を説明し納得させ、事なきを得たのだった。