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choco milk
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想いのカケラ
(バレンタイン圭魅?)

私は手元の綺麗にラッピングした箱に視線を落とし、一人ため息を零した。

卒業前のバレンタインに気持ちを伝えようと決心し、少し前からあれこれ考えて昨日一生懸命作ったチョコレート。
でも直接伝えるなんてとても出来そうにないので、中身に少し細工をして。

だけど、いざ渡そうと思うと躊躇してしまい、なかなか渡せずにいた。
このまま渡さずに持って帰ってしまおうかと何度思った事か。
大体、これを渡したからと言って圭ちゃんが仕掛けに気付くとは限らない。
よく見なければ気付かれずに終わってしまう程度の細工なのだ。
部活では普段あんなに大口叩いている癖に、いざという時に臆病で尻込みしてしまう自分が嫌になる。
「…魅音?どうしたボーっとして?」
「けっ…圭ちゃん?!な…何でもないよ!ちょっと考え事」
突然背後から現れた気配と声に驚き、とっさにチョコレートを後ろ手に隠してしまった。
「ふーん?………なぁ、誰かにチョコあげるのか?」
しかし、圭ちゃんには既にバレてしまっていたらしい。
「えっ?!」
「今隠したのチョコだろ?」
「えっと…その…」
気が動転して慌ててしまったが、バレちゃ仕方ない…って隠す必要ないじゃない!
今を逃したらもうチャンスはない!
「け…圭ちゃんが一個も貰えなかったらかわいそうだから持ってきたの」
圭ちゃんと目も合わせられず、視線を逸らしながらチョコを差し出した。
色気も何もあったもんじゃない。だけど今の私にはこれが精一杯だった。
「……俺に?」
恐る恐る圭ちゃんを見ると、自分に貰えると思っていなかったかのように目を見開いていた。
「それ絶対一人で全部食べてね!人にあげたり人前で食べたりしたら絶対ダメだからね!」
私は圭ちゃんにチョコを渡し、釘を刺して走り去った。



さっき、偶然廊下で魅音を見かけた。
いつもの魅音らしからずため息なんかついていたので、近寄ってみると手にプレゼントのような小さな箱を持っていた。
今日は朝からいくつか同じような包みをもらっていたのでそれがチョコレートだという事はすぐに分かった。
そんなに思いつめた顔をして、誰にあげようとしているんだろう。
それが気になり、俺は魅音に声をかけた。すると魅音は慌ててチョコレートを隠した。
その反応に何故だかチクリと胸が痛んだ。
やっぱり俺じゃないかと少し残念に思うと同時に魅音の意中の相手がどうしても気になり、気づけば魅音に尋ねていた。
するとなんと魅音は俺にチョコを渡してきたのだ。

俺は家に帰ってから、真っ先に魅音からもらったチョコレートを開封した。
しかしもらった時に言われた言葉が引っかかる。
魅音があんな事を言うということは何かあるんだろうか。
中を見ると、一見普通の可愛らしい小さなカップに入った手作りトリュフチョコが4つ。
でも魅音の事だ。きっと何かあるに違いない。
眺めていても仕方がないので恐る恐るチョコを口に含んだ。
「ん、うまい」
一つ目はなんの変哲もない普通のチョコだった。
だが、一つ目で安心してはいけない。
慎重に一つ一つチョコを口に運んでいったが、最後まで普通の美味しいチョコだった。
「あれ?おかしいな…」
魅音の口ぶりからしてっきり何か仕掛けがあると思い込んでいたが俺の思い過ごしだったのか?

首を傾げたまま俺は箱を片付けようとしてふとあることに気付いた。
「カップに何か書いてある…」
それぞれ4つのカップにひらがなが一文字づつ書かれていた。
「なんだ…?暗号か?」
しばらくその4つの文字をあれこれ並べ替えてその意味を探る。
そしてある時、ピンとひらめいた。
「…そういうことか…!」
今更ながら、渡された時の魅音の真っ赤になった顔の意味に気付いた。
嬉しいような恥ずかしいような、むずむずした感情が心をくすぐる。
並べ替えたその4つの文字を見て、思わず頬が綻んだ。

"だ" "い" "す" "き"

俺は数分かけて完成させたそのパズルの答えを箱に戻し、大切にふたをして机の上に飾った。



あとがき