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ひだまり
(悟魅)

僕は日直で校庭の花壇の水やりをしていた。すぐ近くで魅音も同じように水をやっている。
その時ふいに学校のそばを通りかかった村人の視線を受けた。
「あれ、北条家の子じゃない?」
「まぁ、魅音ちゃんに水やりなんかやらせて…ああいうのは男にやらせておけばいいのに」
こういう嫌味を言われるのは日常茶飯事。もうすっかり慣れてしまった。
魅音を見ると、村人達を睨みつけて拳を強く握り締めていた。
そんなに強く握ったら血が滲んでしまうのではないかと思う程に。
「魅音、もうちょっとだから戻ってていいよ」
園崎家の魅音が、北条家の僕と一緒にいるのを見られるのは好ましくないだろうと今更ながらに思い、魅音に声をかけた。
「いいよ!私がやるから悟史が戻ってなよ」
魅音は意地になってそのまま作業を続けた。
とはいえ、もうほとんど終わっていたので二人でさっさと終わらせ一緒に教室に戻った。
今日は授業が早く終わったので教室には誰も残っていない。
魅音は悲しそうな顔で俯いてしまっていた。
「…魅音、そんな顔しないでよ」
僕は思わず魅音の頬に触れた。
すると魅音はハッと顔を上げる。
僕を見る瞳に涙が滲んで、魅音は泣き出してしまった。
ああ、そんな顔が見たい訳じゃないのに。
「…っ…ごめんなさい…うちのせいで…」
北条家は村を治める御三家の筆頭、園崎家と対立してしまい、村から孤立している。
そんな村の中で、学校は唯一僕達兄妹が安らげる場所だった。
敵対する立場にいるはずの魅音は僕達をを守って、眩い笑顔を向けてくれた。
「魅音は悪くないよ。十分良くしてもらってる。魅音が泣いてると僕も悲しくなるよ」
僕はその笑顔に幾度となく救われた。
魅音が笑っていてくれなきゃ駄目なんだ。
「だから笑ってよ、魅音」
魅音の頬を伝う涙を指で拭う。
それが余計に追い詰めてしまったのか、魅音は更にしゃくりあげて泣いてしまった。
僕はどうすればいいか分からず魅音を抱きしめた。
これで落ち着いてくれればいいのだけど。
僕はひたすら髪を撫でて、魅音が落ち着くのを待った。

しばらく僕の胸の中で泣いていた魅音が顔を上げたので、微笑みかけると
魅音も僕の大好きなひだまりのような笑顔で微笑んでくれた。
この笑顔で嫌な気持ちがすっと消えて、柔らかい光で心が満たされた。



あとがき