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雪解け
(罪滅し編その後のレナ魅音)
レナが雛見沢分校で籠城事件を起こしてから一ヶ月。園崎家が裏から色々手を回してレナは普段通りの生活に戻ろうとしていた。
事件の後、レナはみんなに謝罪して、今まで以上に皆に気を使っている。特に私に対してはすごく過保護になっていた。
「魅ぃちゃん、危ない!」
「レナ、大げさだって…」
足元に落ちていた誰かの鞄に私が気づかずレナが私を止めようと飛びついてきた。その勢いで私は尻もちをついてしまった。
気にかけてくれてるのはありがたいけど、過剰すぎて少し困惑する。もう気にしてないって言ってるのに。
「はぅ!ごめんね魅ぃちゃん」
慌ててレナが立ち上がって謝った。
その瞬間、レナの顔が逆光で見えなくなりレナに殴られた時の光景がフラッシュバックした。
「…っ!」
「魅ぃちゃん…?大丈夫?」
思わず身構えてしまった私をレナが心配そうな顔で覗き込んで、私ははっと我に返る。
「あ、あはは、大丈夫大丈夫!」
そして咄嗟に笑顔を作って立ち上がった。
「ちょっとトイレ行ってくるね!」
そう言って私は教室を後にして、トイレの個室に駆け込んだ。
「はぁ~……まいったな…」
少しの間トイレの中で気持ちを落ち着けた。


先程の一部始終を見ていた俺は魅音の帰りが遅いので気になってトイレへ向かった。
すると教室から少し離れた廊下でため息をついている魅音を発見した。
「どうした魅音、ため息なんかついて。便秘か?」
とりあえず重い空気にならないように冗談を交えながら声をかけた。
「はぁーーーー。本当圭ちゃんはデリカシーないよね」
魅音が不機嫌そうにじとーっとした目で俺を見る。やっぱりいつもの元気はない。
「悪い悪い、でも本当にどうしたんだよ」
「んー……別に、大した事じゃないよ」
「言いたくないならいいけどさ、なんかあったら言えよ」
そう言うと魅音は少し考えてきょろきょろ辺りを見回してから口を開いた。
「…その、レナが学校に立て籠もった時さ、私殴られたじゃない?その事はもう今更気にしてる訳じゃないんだけど…たまにレナの仕草とか表情とかであの時の事思い出しちゃって構えちゃう時があって…うまくごまかせればいいんだけど気づかれちゃうとまたレナ気にしちゃうでしょ?」
「……でももうレナも反省してるしもうそんな事はしないよ」
「それはよく分かってるよ!分かってるしもう気にしてない…気にしてないつもりだけど反射的に反応しちゃうから自分でもどうしようもなくて…だから困ったなって」
思っていたよりも魅音は心に傷を負っていたようで、咄嗟になんて返したらいいか分からず唸った。
「うーん…それならもう変に隠すより正直に言った方がいいんじゃないか?」
「ん…そうなんだけどさ、でも今ただでさえすごく心配されてるのにそんな事言ったら余計に酷くなっちゃうんじゃないかな。……はぁ、いっそのこと少し距離を置いてくれた方が楽なんだけどな」
「そう言うなよ。それだけ反省して少しでも償おうとしてるんだろ」
「はは、冗談だよ」
魅音は小さく苦笑した。
「でも…うん…そうだよね…」
少し視線を落として何かを噛み締めるように頷いた。


それからというもの、いつも通りに過ごしていた…つもりだったが、レナが少し私によそよそしくなったような気がする。これまでが過保護過ぎたからこれが普通なのかも知れないけど、急に距離を置かれると突き放されたようで不安になってしまう。

ある日の体育の時間、いつものように激しい部活を繰り広げていた時、不覚にも体勢を崩し、勢いよく転んでしまった。走っていた所で転んでしまったため結構派手に擦り剥いてしまった。
「いったたた…」
「魅ぃちゃん…!」
近くにいたレナが近寄ってきて、私に手を伸ばそうとしたが、何故かその手を引っ込めた。
そして辺りを見回し近くにいた圭ちゃんを呼んだ。
「…け、圭一くん!魅ぃちゃんを保健室に連れて行ってあげて!私先生呼んでくる!」
そしてレナは走り去って行った。
「…え?あ、ああ…」
これまでだったら絶対にレナが付き添って保健室に連れて行ってくれていたはず。圭ちゃんもその異常さに気付いて目をぱちくりさせていた。
やっぱり私…避けられてる…
「魅音、大丈夫か?うわ…派手に擦り剥いたなぁ」
圭ちゃんが私を見て何か言っていたが全く耳に入って来なかった。
「…圭ちゃん…私レナに何かしたかなぁ?」
「さぁな。心当たりがありすぎてさっぱり」
「うううう~~」
圭ちゃんに追い打ちをかけられがっくり肩を項垂れ泣きそうになる。
「そんなの俺に聞かれたって分かるわけないだろ。直接レナに聞いてみろよ。それより魅音、立てるか?傷洗って保健室行くぞ」
圭ちゃんは私の手を引っ張って立ち上がらせると相変わらず項垂れたままの私に付き添って保健室に向かった。
「魅音、一度ちゃんとレナと話してみろよ。別に拒絶されてる感じでもないだろ。相変わらず魅音の事心配そうに見てるのは変わらないし。あんまり一人で考え込んでもいい事ないぞ」
「うん、わかった。……圭ちゃん、ありがとう」
すっかり落ち込んでしまった私を見かねてか、圭ちゃんは再びレナと話すよう促してくれた。
こういう時話を聞いて一緒に考えてくれる仲間がいるとすごく助かる。

その後の休み時間私はレナを校舎裏に呼び出した。
「魅ぃちゃん…どうしたの?」
レナはぎこちなく笑顔を浮かべた。
「あの、えっと、そのさ…私なんかレナに悪い事した?」
「ううん、どうして?」
不思議そうな顔をしてレナは首を傾げる。
「今までずっとべったりだったのに急によそよそしくなったから…私よく調子に乗ってやりすぎちゃう事あるしもし何か気に障ることがあったなら言ってほしいの!」
「ああ、そういう事…」
何かを考えるように視線を巡らせた後、レナは口を開いた。
「…私が一方的に魅ぃちゃんにお世話焼いても迷惑かなって…」
「そ、そんな事ないよ!なんでいきなりそんな事…」
「………だって、距離置いた方がいいんでしょ?魅ぃちゃんの負担になりたくないから」
レナの言葉が引っかかり、その違和感の正体を探るとこの間の圭ちゃんとの会話に辿り着いた。
「…!まさか、聞いてたの?」
レナは下を向いたまま何も答えなかった。
「違うの!あれは冗談で…どうしたらいいか分からなくなって苦し紛れに…」
「だから魅ぃちゃんが私の事で悩むなら私なんていない方がいいんだよ!」
違う、そうじゃない…私はただ…
お互いに相手を想うあまりにすれ違って離れていってしまうなんて馬鹿みたいじゃないか!
レナが一瞬でも煩わしいと感じてしまった自分に腹が立った。
「嫌だ、そんなの嫌だ…私はレナとずっと一緒にいたい!私に気を使って腫れ物みたいに扱われるのも嫌…前みたいに一緒に馬鹿やってふざけあって笑っていたいよ!」
もどかしい気持ちが言葉になって溢れ出し、まくしたてているうちに感情が高ぶり涙となり、私は子供のようにレナへの気持ちを吐き出した。
「どうして?…どうしてあんなに酷い事したのに私にそんな事が言えるの?」
その言葉にレナを見ると、レナの頬にも涙が一筋伝い零れ落ちた。
「だって友達だもん!…レナはどう思ってたか分からないけど、同年代の女の子の友達なんていなかったからレナが転校してきて仲良くなれて嬉しかったんだよ」
「魅ぃちゃん…」
言うやいなやレナは私に駆け寄り私の体をぎゅっと抱きしめられた。
「ごめんね…魅ぃちゃんの事信じられなくて…大好きだったのにどうしてあんな事…」
レナは涙に震えた声で何度も私に謝った。
「もういいよ、私や園崎家に対する誤解が解けたなら…私は絶対レナを裏切ったりなんかしないから」
「そうだよね、ごめん…ごめんね…」
レナは泣きながら何度も謝った。私もレナを抱きしめ二人でしばらく泣いた。

「…ねぇレナ、もうあの日の事は忘れよう?私も忘れる」
「うん」
「もし私がまたあの日の事思い出してビビっちゃった時は…またこうやって抱きしめてくれたら怖くなくなるかも…なんて」
言いながらなんだか気恥ずかしくなり、最後に軽い口調で笑ってごまかした。
「わかった、魅ぃちゃんが安心するまでいっぱいいっぱい抱きしめてあげるね。怖がってなくても抱きしめちゃうよ!」
「ああっ、でもみんなの前は恥ずかしいからやめてね!」
レナはくすくす楽しそうに笑いながら抱きしめる腕の力を強めた。


その後レナと一緒にいてもあの日の事を思い出して怯えるような事はなくなった。
「魅ぃちゃーん!お待たせ」
「じゃ行こうか!」
レナは駆け寄ってきて私の腕に抱きついた。前よりスキンシップが増えたけど、全然嫌じゃなかった。
「レナさんと魅音さん前より仲良くなってませんこと?」
「レナと魅ぃちゃんは前から仲良しだよ?ね?」
「ねぇ?」
二人で顔を見合わせ、心から笑いあった。


あとがき