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融解
(圭一と魅音シリアス)     

「おい、そんな事したら鬼隠しに遭うぞ!」
「委員長に言っちゃうよー!」
休み時間、トイレから帰ってきて教室の扉の前に立った時、クラスメイトの賑やかな喧騒の中から物騒な会話が耳に飛び込んできた。
オヤシロ様の怒りに触れると鬼隠しに遭うというこの村の言い伝え。
綿流しの日に毎年連続怪死事件が起こっている今、この話題は雛見沢ではタブー視されている。
しかし子供達はそんな事お構い無しだ。
そして、その連続怪死事件の黒幕が園崎家だと思っている村人もいる。
園崎家があたかも自分達が関与しているかのように振る舞っているから仕方ないんだけど。
「おい、それは魅音が…園崎家がやってるって言いたいのか?」
呆けていると突然圭ちゃんの低い声が割り込んできた。
…圭ちゃん…
「あ、いやそういう訳じゃ…」
「園崎家がやったって証拠もないのに決めつけるのかよ?」
「こ、これは冗談で…」
その子達は圭ちゃんに問い詰められ狼狽えていた。
どうしよう、止めた方がいいかな。でもすごく入り辛い…
「園崎さん、どうかしましたか?」
そこへちょうどいいタイミングで知恵先生がやってきた。
「いえ、なんでもありません」
私は何事もなかったようににっこりと笑顔を作って知恵先生に振り向くと、教室の扉を開けた。
「みんな、先生来たよ!席に戻って!」
圭ちゃんに睨まれていた先生が来て逃げるように席に戻った。
自分の席に戻る時に険しい顔のままの圭ちゃんと目が合った。
「魅音…」
「ほらほら圭ちゃんも早く座って!先生に怒られちゃうよ」
私が笑顔で促すと圭ちゃんは渋々席に戻った。

その後の授業は全く耳に入らなかった。
授業どころか授業が終わった事にすら気付かずみんなに不思議な目で見られる始末。
さっきのあの子達の言葉だけなら冗談で済ます事が出来たのに、さっきの圭ちゃんの言葉と瞳が頭から離れなかった。
私は再び気分転換に外に出る事にした。

「魅音!」
校舎の裏までふらふら歩いていたら圭ちゃんに声をかけられた。
「さっきの話…聞いてたか?」
「…さっきって?」
圭ちゃんが言いたい事はなんとなく分かっていたけど一応聞き返す。
「授業が始まる前」
「………………うん」
一瞬誤魔化そうか迷ったけど、きっともう見透かされてるような気がして正直に頷いた。
「…あんなのただの冗談なのにさ、圭ちゃんがあんな事言うからあの子達怯えちゃってかわいそうに」
いつも通りにおどけてみせる。
「なんでもかんでも園崎家のせいにされて悔しくないのかよ!」
圭ちゃんがまたさっきみたいに顔を険しくして声を荒げた。
「仕方ないよ。うちがそういう風に振る舞ってるんだもん」
「でも園崎家は関わってないんだろ?」
「さぁね、どうだろ?」
「魅音!」
「……少なくとも私と本家は何も関わってないよ。でも誰がやったか分からない以上全く関係ないとは言いきれないでしょ?
うちの親類には物騒なのが多いからね」
圭ちゃんにこうして問い詰められただけで次期頭首としての仮面がボロボロと脆く剥がれ落ちていく。
本当はこんな余計な事話すべきじゃないのに。
「なら魅音は関係ないじゃないか。どうしてそんなはぐらかすような事言うんだよ?」
「それがうちの家訓なんだよ。園崎家がそう振る舞ってる以上私がはっきり否定するわけにはいかないし」
「なんだよそれ…」
「ちょっとしゃべり過ぎちゃったな。今の話はみんなには内緒だよ?」
まだ釈然ととしない顔の圭ちゃんに一応釘を刺す。
「…魅音が否定出来ないなら俺が否定してやるよ。またなんか言われたら俺に言えよ」
「圭ちゃん…」
圭ちゃんの真剣な瞳とまっすぐな言葉に心を射抜かれる。
園崎家に生まれたからにはこういう事は仕方ないと思っていた。
だけど、圭ちゃんが自分の事のように怒ってくれて、悪い印象を持たれがちな園崎家と私を頑なに信じてくれている事が…
泣きたくなるくらい嬉しかった。
「ありがと。……圭ちゃんや仲間達が信じてくれてれば大丈夫だよ」
瞳に滲んだ涙を悟られないように一度下を向き、顔を上げて心からの笑顔を圭ちゃんに向けた。

そうしていると始業のベルが鳴った。
「やば、早く戻らなきゃ!」
「げ、魅音走るぞ!」
「うん!」
そして私達は教室まで一目散に駆け出した。




あとがき