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幸せな夢
(詩魅お泊り。後半シリアス) 
今日は珍しく園崎本家に母さんと詩音が泊まりに来ている。
親族会議の日にたまたま集まって、そのまま本家に泊まる事になった。

久しぶりに婆っちゃも含めて母娘水入らずでゆっくり過ごした。
前だったら考えられなかったけど、婆っちゃもだいぶ丸くなって公の場でなければ特に何も言わなくなった。
なんだかんだ言っても娘や孫は可愛いらしい。
特に詩音は婆っちゃが自分を疎ましく思ってると思ってたみたいだけど、それは表向きだけで実際は結構気にかけてたりする。
その誤解が解けてきたみたいで私も嬉しい。

そして夜になって私と詩音は同じ部屋で寝る事になり、布団を敷いていた。
「お姉、鼻歌なんか歌っちゃって随分ご機嫌ですね?」
「だって一緒に寝るのなんて久しぶりだし!」
「ふ~ん…そっかそっか、いつも一人で寂しかったか」
詩音がふざけてニヤーっと笑った。
「寂しくなんかないもん!」
その憎たらしい笑顔に条件反射でそう言い返した。
「……最初の頃は寂しかったけどもう最近はそんな事思わなくなったな。でもやっぱり誰かと一緒だと嬉しいね」
「魅音…」
詩音は何を思ったか急に神妙な顔をして私を見つめていた。
つい漏らしてしまった本音が恥ずかしくなり、空気を変えようとわざと明るい声で言った。
「さ、布団敷けたよ。寝ようか!」
詩音はため息をつくとまたさっきの意地悪な笑顔を浮かべた。
「よしよし一緒に寝ましょうね~。私がいるから寂しくないですよ!」
そして詩音は大袈裟に私の頭をくしゃくしゃなでた。
「ちょっとやめてよ!もう寂しくないってば!」
その後散々大騒ぎしながら久しぶり色々な話をした。
そして私達は昔のように布団をくっつけて寄り添って眠った。





私は夜中にふと目を覚ました。見慣れない天井に不安になって左右を見渡すとお姉ちゃんがいない。

…そうだ。宴会で間違って刺青を入れられて、私は魅音じゃないって言っても聞いてもらえなくて、そのまま頭首の修行をするからって婆っちゃの家に連れて来られたんだ。
見慣れない広い部屋に一人きりで静寂に押し潰されそうになる。
「…っく…お姉ちゃん…お母さん…こんな広い部屋に一人きりは嫌だよ…」
これはお姉ちゃんから魅音を奪った罰?
私がわがまま言わなければ…魅音を羨み妬んで悪い妹だったから私は家族と引き離され一人になってしまったんだ。
「…ぇっく…ごめんなさい、ごめんなさい…もうわがままいわないから…いい子にするから…うっく…」
そのまま泣き疲れて眠るまで私は謝り続けた…




「…っ!」
再び目を覚まし、思わず隣を確認する。
そこには、同じ顔のもう一人の自分が眠っていた。
「…お姉ちゃん…!」
言い様のない安堵を感じ、私はまた涙を流した。

そして同時に自分の声に我に返った。

…あ、夢か…

随分懐かしい夢を見たものだ。
私が園崎本家に連れて来られた頃は慣れない部屋といつも側にいた姉や両親がいない不安で毎日泣いていたっけ。
慣れてしまえばなんて事はないけど、突然世界が変わってしまった不安と恐怖、そして罪の意識に苛まれ、まるで地獄に落とされてしまったような感覚だった。

実際はいくら夢であって欲しいと願っても二度とそれまでの生活が戻って来る事はなかった。

でも今、目を覚ましたらそこにかつての姉がいた。
感情が高ぶって涙が止まらなくなってしまった。
「…ん…泣いてるの?」
すると詩音が目を覚ましてしまったらしい。
「…ぁ…これは…!」
「しょうがないなぁ。いつまでたっても泣き虫なんだから」
寝ぼけているのか少しふわふわした口調で、昔怖い夢を見て泣いた時のように私を抱き寄せて頭をポンポンしてくれた。
涙腺が完全に決壊し、とうとう嗚咽を漏らして幼い子供のように抱きついて泣きじゃくった。





あとがき