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秘密の花園
(圭魅。魅音の乙女部屋)

今日は魅音のゲームを借りる為に園崎家に来ていた。
「じゃあ圭ちゃん、持ってくるからここで待ってて。漫画読んでていいからね」
そう言って魅音が部屋を出て行ってからどのくらい経ったのだろうか。
ゲームを持ってくるだけにしては結構な時間が過ぎていた。
「魅音遅いな…ゲーム取りに行くのにどれだけかかってるんだ?」
それに待っているうちに便意を催し、さっきからトイレに行きたくて仕方がなかった。
「あーもう我慢出来ない!」
魅音が帰ってくる気配も全くないし…
待ちきれなくなった俺は居間を抜け出した。

「トイレどこだ…?」
とりあえず廊下を歩いてみる。
しかしどこまでも廊下が続いていて端が見えない。
同じような部屋が続いていて自分がどこにいるのかも分からなくなってくる。
「あんまりうろうろした事なかったけど…この家広すぎる!」
少し歩いて、このままじゃ埒があかないので戻る事にした。
しかし引き返して歩いてみても一向に元いた部屋は見つからなかった。
「…迷った…」
更にしばらくうろうろしていると、近くの部屋から物音が聞こえてきた。
良かった人がいた…!この際お手伝いさんでもお魎さん…はあんまり会いたくないけど…誰でもいいからトイレに案内してくれえええ!
その部屋に寄ろうとした瞬間、中からお手伝いさんらしき人が出てきた。
「あっ、あのすみません!御手洗い貸して下さい。魅音がなかなか戻って来なくて…」
「あら、魅音ちゃんのお友達?御手洗いはこちらですよ」

こうしてお手伝いさんにトイレを案内してもらい、ようやく用を足す事が出来た。
ってしまった!帰り道が分からない!この家は迷路屋敷か!
お手伝いさんまだいるかな…

そう思っていたところに脇の部屋から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あるぇ~?ここになかったらもうどこにあるか分からないよ~」
魅音だ!こんな所にいたのか。
声をかけようとして襖の前に立った時、少し空いていた襖から覗いた部屋の様子に絶句した。
その部屋は可愛らしいクッションやぬいぐるみの置かれた女の子らしい部屋だった。
…これ、誰の部屋だ?
その魅音とは不釣り合いな部屋を見回していると、敷きっぱなしの布団の脇にあった人形に目が止まった。

あの人形…前に俺が魅音にあげたやつだ…
………ってことは?まさかこれ魅音の部屋なのか?!

「あっ!あった~~~~!!こんな所にしまいこんでたんだぁ」
突然魅音が大声を出したので我に返って魅音に視線を向けた。
「早く戻らなきゃ」
そう言って机の引き出しを戻すと、襖に背を向けていた魅音がこちらに振り返った。

あ、やばい。

その瞬間、襖の外に立っていた俺と魅音の目が合った。

「えっ………?!」
魅音の目がまんまるく見開かれた。
「…けっ、圭ちゃん?なんでここにいるの?!勝手に覗かないでよー!!」
魅音の顔はみるみる真っ赤になっていき、そばに置いてあったクッションを俺めがけて投げつけた。
「…わっ、と、通りすがりに見えたんだよ!」
「居間で待っててって言ったのに!ついてきたの?」
「違う!魅音がなかなか帰って来ないからトイレ我慢しきれなくて出てきたんだよ!ちょっと落ち着けーー!!」
魅音は近くにある物を手当たり次第に力の限りげつけてきた。幸い柔らかいものばかりだったので何事もなかったが、もう少し固いものだったら負傷は免れなかっただろう。
「魅音の声がしたから声かけようとしたらたまたま見えちゃったんだよ!偶然なんだ信じてくれ!」
弾がなくなり息を切らして大人しくなった魅音に、おそるおそるかき集めたぬいぐるみやらクッションをやらを渡した。
「ほら、これ」
「…ちっ、違うの!!この部屋はその……そう!詩音が来た時の部屋で…」
さっきまで怒っていたと思ったら今度は突然聞いてもいない部屋の言い訳を始めた。
「詩音の部屋に俺がやった人形置いてるのか?」
思わず人形を指差して魅音を追求してしまった。
「そ、それはその…うぅぅ」
この反応は魅音の部屋で間違いなさそうだ。よく見たら魅音が学校に持ってきてる私物も置いてある。
いつも通されている部屋はやけに物が少ないと思っていたけど別に部屋があったのか。
「別に嘘つく事ないだろ」
「……だ、だって…私の部屋がこんななんて…変でしょ?」
観念したのか魅音は俯いてそう言った。
渡したぬいぐるみやクッションをぎゅっと抱えて顔を赤くして慌てている魅音を見ていたら、もう最初の違和感はなくなっていた。
「そんな事ないさ。魅音だって女の子だもんな」
最初に不釣り合いなんて思ってしまった事を心の中で詫びながら、恥ずかしそうに俯いている魅音の頭を撫でた。
「…ふぇ…?な、何言って…」
魅音がまだ人形を大事に持っていてくれた事が嬉しくて更に調子に乗ってしまう。
「なぁ、人形枕元に置いてあるって事は一緒に寝たりしてるのか?」
「なっ?してないよ!毎日抱きしめて一緒に寝たりなんかしてな…」
「ほー?」
「…はっ!してない!してないからね?!」
「はいはい」
魅音は顔を真っ赤にして手をぶんぶん振っていた。
否定しながらも正直に喋ってしまう魅音に顔がニヤけてしまう。
そしてまさか本気で一緒に寝てたとは思わず、頬がどんどん緩んでいく。
「そんなに大事にしてくれてありがとな」
そして自然と感謝の言葉が漏れて、魅音の頭を再び撫でた。
「…あぅ…圭ちゃんずるいよ…」

更に部屋の中をよく見るといつも魅音が好んで見るような熱血漫画やゲーム類も混ざっていた。

魅音らしいな。
一見対極に見えるけど、この可愛らしい魅音も、いつもの元気な魅音もどっちも魅音なんだな。

「…って、いつまでここにいるのよ?勝手に見ないでってば~!!」
部屋を見回していた俺に気づき魅音は再び慌てて俺を部屋から追い出して勢いよく襖を閉めたた。
「いいじゃないかよもうちょっと…」
「ダメ!ほらゲーム持って早く帰った!」
「なんだよ、ルール確認も含めて少しくらい相手してくれよ」
このまま帰るのが惜しくて魅音に対戦を持ちかける。
その言葉に魅音はピタリと動きが止まった。かと思うといつもの部活モードの顔でニヤっと笑った。
「そうだね。ちょっと勝負していく?」
魅音が恐ろしい笑みを浮かべて俺を挑発する。
「もちろん負けたら罰ゲームだからね?私の部屋勝手に覗いた落とし前はゲームできっちりつけてもらうよ!」
いつもなら竦み上がってしまう程の殺気だが、魅音の秘密を知った俺は非常に気分が乗っている!今なら負ける気がしないぜ!
「そうこなくちゃ!じゃあ魅音が負けたらまたこの部屋に招待してもらおうか」
「な、なんでそんなにこの部屋にこだわるの?!」
「何ビビってるんだよ!勝てばいいんだろ?」
俺も負けじとニヤリと笑い返す。
「ビビってなんかないよ!さっさと戻るよ!」
そう言って魅音は踵を返し、俺もその後に続きいつもの部屋へと戻っていった。
そして二人で熱い戦いを繰り広げたのであった。

あとがき